黄金時代のカギを握る5番打者

Written By 菅谷齊
中田翔
(時事)

問題選手の中田翔を巨人が獲得したのは、リーグ3連覇を達成するのは5番打者が必用だったからである。この5番を打つ打者は、最も地味な重要打者、といえる存在なのだが、責任は重大という打順。どのチームも「5番は永遠の課題」として悩んでいる。

 

ONコンビに続く打者に苦しんだV9巨人

「中田を救いたい」と原辰徳監督。移籍を発表すると、すぐ一塁・5番で先発出場させた。すぐ本音が表れた。巨人は阪神をとらえた時期で、優勝するには打線強化と判断したわけである。

巨人には5番打者で苦しんだ歴史がある。3・4番は大物がいるのだが、その後を打つ打者が不足していた。ワン・ツー・パンチは形成できても、クリーンアップ・トリオ(クリーンアップは4番打者を指す)はなかなかそろわなかったということである。

あの無敵を誇ったV9時代でさえ、王貞治-長嶋茂雄のいわゆる“ON砲”の後を打つ打者が課題だった。川上哲治監督は「外国人選手を使わないチーム」を作る方針だったから、日本選手のトレードを多用して打開しようとした。

1965年=吉田勝豊(東映) 66年=田中久寿男(西鉄) 67年=高倉照幸(西鉄)、森永勝也(広島) 69年=桑田武(大洋)

いずれも主軸を打った実績があった。高倉は西鉄黄金時代の1番打者、森永は長嶋茂雄の4年連続首位打者が途切れたときの首位打者、桑田は最下位から日本一になった三原魔術の本塁打王だった。このなかで期待にこたえたのは高倉だけだったが、それもシーズン半ばまで。

 

地獄のプレッシャーだったONの後

そうそう大物が余っているわけがない。V9 途中から自前の選手を起用。柴田勲、高田繁、黒江透修、国松彰、森昌彦らをとっかえひっかえ据えた。目立ったのはスイッチヒッターの1番だった柴田が右打ちに専念して26本塁打を放ったときぐらい。その後、末次民夫が役目をなんとか果たした。

「責任を感じて…」「負担が大きすぎる」「二度と嫌だ」

5番を打った経験者たちの言葉である。ずっと優勝していたから指摘されなかったが、地獄のプレッシャーは大変なものだったらしい。彼らの多くはONの前にチャンスメをつくる打者だった。それが打席に立つとき、ONが走者。タイムリーを打てればいいが、凡打に終わると「ONを塁に残した」とファンから野次られる。

「王さん、長嶋さんに匹敵する打者なんているわけがない。ONの後の5番なんて最初から無理」

常勝巨人の好打者たちがそう言って敬遠したのが巨人の打順5番だった。

 

史上最強の西武のトリオ、隠れたロッテ主軸

強力な5番打者を置いたチームがあった。1990年代前半の西武で、3番秋山幸二、4番清原和博、5番オレステス・デストラーデのトリオである。90年からの3シーズンはすごかった。(数字は本塁打-打点)

  • 90年 秋山=35-91 清原=37-94 デストラーデ=42-106
  • 91年 秋山=35-88 清原=23-79 デストラーデ=39-92
  • 92年 秋山=31-89 清原=36-96 デストラーデ=41-87

デストラーデはすべて本塁打王、最初の2シーズンは打点王だった。球史最高のトリオといっていい。

これに近いのが2000年代初めの巨人。清原、松井秀喜、高橋由伸がそろったとき。

  • 00年 松井=42-106 清原=16-54 高橋=27-74
  • 01年 松井=36-104 清原=29-121 高橋=27-85
  • 02年 松井=50-107 清原=12-33 高橋=17-53

00年と02年は優勝。この2シーズン、松井は本塁打と打点の二冠を獲得している。特筆は清原で西武と巨人で実績を残した。

優勝とは縁がなかったが、1980年代半ばまでのロッテのトリオは破壊力があった。レロン・リー、落合博満、レオン・リーである。落合が3度の三冠王に輝いたシーズンの数字を挙げてみる。

  • 82年(5位) リー=15-60 落合=32-99 レオン=22-78
  • 85年(2位) リー=28-94 落合=52-146 レオン=31-110
  • 86年(4位) リー=31-94 落合=50-116 レオン=34-97

これでBクラスが2度もあったのは不思議でしかない。優勝していれば西武トリオと同格の評価を得たと思う。

 

瞬間最大風速の伝説の阪神トリオ

1シーズン限定で振り返ると、1985年に優勝した阪神が素晴らしい。ランディ・バース、掛布雅之、岡田彰布のクリーンアップ・トリオである。

バースは打率3割5分、54本塁打、134打点で三冠王。掛布が3割、40本塁打、108打点、岡田は3割4分2厘(2位)、35本塁打、101打点。3人で129本塁打、343打点というすさまじさだった。巨人戦で放った「甲子園バックスクリーン3連発」の年である。この阪神トリオは“瞬間最大風速”ではナンバーワンといっていい。

ほかに、3・4番コンビで印象に残っているのは、西鉄の中西太-大下弘、東映の大杉勝男-張本勲、阪急の加藤秀司-長池徳二、巨人の張本-王、広島の衣笠祥雄-山本浩二など。

黄金時代を築くのは強力な5番打者は必須であることが分かる。近年は外国人選手を当てはめることが多いのだが、現状は大リーグの球団拡張(現在30球団)の影響で選手レベルが落ちており、かつてのような大物がいない。

5番が打てばチームが勝つ確率が高くなる。しかし、5番打者が注目されることは少ない。「最も地味な重要な打者」なのである。全日本代表チームの4番を打った中田がその地味で重要な役割を果たせるか。


「略歴」

菅谷 齊(すがや・ひとし)1943年、東京・港区生まれ、法大卒。共同通信で巨人、阪神、大リーグなどを担当。1984年ロサンゼルス五輪特派員。スポーツデータ部長、編集委員。野球殿堂選考代表幹事を務め三井ゴールデングラブ賞設立に尽力。大沢啓二理事長時代の社団・法人野球振興会(プロ野球OBクラブ)事務局長。ビジネススクールのマスコミ講師などを歴任。法政二高が甲子園夏春連覇した時の野球部員。同期に元巨人の柴田勲、後輩に日本人初の大リーガー村上雅則ら。現在は共同通信社友、日本記者クラブ会員、東京プロ野球記者OBクラブ会長。

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