富樫勇樹レポート(7): NBAサマーリーグ総括 (宮地陽子)

Written By Yoko Miyaji

■スタッツ

サマーリーグ中、一番活躍したのは7月16日のシャーロット・ホーネッツ戦。10分51秒の出場時間で、12点をあげた。1分あたり1点以上の得点は、かなり効率がいい。シュートも7本打って5本(うち3ポイントは2/2)という高確率。特にドライブインから決めた2本のフローターショットは、身長での弱点を補うスピードやスキルがあることを示した。

その一方で、出場した4試合の平均として見ると9分8秒の出場時間で4.0点、1.5リバウンド、0.25アシスト、0.5スティール、1.25ターンオーバーで、フィールドゴール成功率は46.7%(7/15)。1試合で目立つ活躍はしたものの、全体的には特に目に留まる活躍というわけではなかった。

サマーリーグではコンスタントに活躍する選手はあまりいないので、1試合だけの活躍でも注目される。富樫の場合はまわりより一回り小さいサイズで、年齢も20歳と若いことからカルト的な人気を集めたこともあった。NBA関係者に名前を覚えてもらうためにはそれも大事なことだが、それだけだったという認識も必要だ。

ポイントガードとしてはアシストが少なかった(4試合の合計で1本)のは数字としては問題だが、このサマーリーグでは通常のNBAでよりもアシストの基準が厳しく(おそらく、いつもはNCAAのスタッツをつけているスタッフがテーブルオフィシャルを担当していたため)、実際にNBAの基準ならもう少し数字は出ていたはずだ。

また、試合を見れば富樫がアシストとなるようなパスを何本も出していたことはわかる。実際、ダラス・マーベリックスのサマーリーグ・チームのヘッドコーチをしていたカレブ・カナレスや、ベンチで富樫に頻繁にアドバイスを送っていたダレル・アームストロング・アシスタントコーチは、口をそろえて「コートの状況をよく読んでプレーしていた」(カナレス)、「チームメイトを動かし、やるべきことをやり、プレーを作り出していた」(アームストロング)と、アシストが少なかったことは問題ではないと言っている。

■通用したところ、これからの課題

あくまで、サマーリーグの選手の中でという前提でだが、通用したのは一番にスピード。ドリブルや味方のピック(スクリーン)を使っての攻撃、フローターショットなどのスキルも評価できる。後半の2試合では、チームオフェンスの中で自分の攻めどころもうまく見つけ出していた。ディフェンスでは、相手の動きについていくクイックネスがあり、ほぼ毎試合チャージングを取るだけの気持ちの強さを見せたのもよかった。

マブスのコーチやスカウトたちに聞くと、全員が必ず口にするのが、富樫のバスケットボールIQの高さだ。たとえば、サマーリーグ前のミニキャンプのときから見ていた、エドワルド・ナヘラ(マブス提携のDリーグ・チーム、テキサス・レジェンズのヘッドコーチ)は、「バスケットボールIQが高く、賢い。何でもすぐに学ぶことができる。何をやればいいかわかっていて、どうプレーするかを知っている」と評価している。

課題面では、皆が口々にサイズを補うディフェスについて触れていた。サイズのあるポイントガードとマッチアップしたときのディフェンス、特に、今回のサマーリーグではあまり見られなかったが、ポストアップされたときのディフェンスは、これからの課題だ。富樫自身も、サイズのあるポイントガードとマッチアップした経験が少ないことをあげ、今後の課題としてあげていた。

■今後

富樫は、今秋からの予定について「1年半、日本でやってみて、個人的にある程度自分で納得できる数字は残せたので、海外挑戦したい。NBAがだめでもDリーグでプレーできればと思う」と言っていた。

NBA入りを期待する声があるのは当然だが、まだNBAのロスターに入れるだけのものを見せることができていないのも事実だ。実際、サマーリーグでの試合を見て「NBAレベルの選手ではない」ときっぱり断言した他チームのスカウトもいた。富樫本人や、マブスの関係者からも、彼の今秋からのNBA入りを現実的だと考える声は聞かれなかった。

富樫にとってプラス材料は20歳(7月30日で21歳)という若さ。若いことは、それだけ伸びしろがあると見てもらえるからだ。サマーリーグでのプレーと成長の可能性をあわせて考えると、NBAの公式マイナーリーグであるDリーグ入りが視野に入ってきたことは確かだ。実際、サマーリーグ中に関係者数名に、富樫の秋からのDリーグでのプレーが現実的かと聞いたところ、肯定的なコメントが返ってきた。

サマーリーグでマブスのチームでプレーしたからといって、Dリーグの所属先はマブスと提携するレジェンズだけに縛られるわけではない。マブスとの関係からレジェンズがドラフト下位で指名する可能性もあるとはいえ、ヘッドコーチのナヘラは、「彼の名前は当然出てくると思うが、その時のポイントガードの状況次第。控えとして検討するかもしれないが、ベンチに座らせるだけのために獲得はしたくない」と言っている。ナヘラは、小さいポイントガードはあまり好きではないという情報もあり、富樫の代理人は他のDリーグ・チームにも売り込みをかける予定だという。

Dリーグの活動が始まるのは、NBAのシーズンが開幕した後。まずはチーム振り分けのドラフトに注目だ。

文:宮地陽子  Twitter: @yokomiyaji

 

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